
先手必勝!特許&契約関連は、早めの専門家相談がオススメな理由
川崎市にあるコワーキングスペース&起業支援拠点「Kawasaki-NEDO INNOVATION CENTER(K-NIC)」 では、研究開発型スタートアップを中心に、起業準備者向けの「分野別相談会」を毎月開催しています。
分野別相談会を対応するのは、本業で専門領域を持つ20名以上のK-NICサポーターたち。技術シーズの事業化、ビジネスモデル構築、資金調達、知財戦略などについて、各分野の専門家が1対1で相談を受けます。なんと、これらの相談はすべて無料。
通常は有償でしか受けられないような専門家に相談できることから、K-NICの支援メニューの中でも非常に人気の高い支援メニューです。
今回は、知財戦略の専門家である弁護士・弁理士の丸山真幸サポーターにインタビューを行いました。
これまでのキャリアや、分野別相談会で実際に多い相談内容、そして「早めに相談すること」の大切さについて伺いました。

丸山真幸氏
<プロフィール>
弁護士法人内田・鮫島法律事務所 弁護士・弁理士 東京大学工学部(原子力専攻)卒業。
特許事務所にて約8年の実務経験を積んだ後、小説「下町ロケット」に登場する弁護士がモデルとなった現事務所に移籍。特許・意匠・商標・著作・不競等、数多の知財紛争における経験を活かし、主にテック系のスタートアップ・ベンチャー企業を対象に、真に「強い」知財戦略を策定・実行するためのサポートを実施。特許リサーチに基づく発明発掘・アイデア出しが得意。2019年より、リアルテックファンド「Patent Booster」就任。
幅広い技術・業界の経営判断に関わる弁護士という仕事
大学で工学部を卒業後、同級生の多くがメーカーなどへの就職を志望する中、特許事務所へ入所しました。弁理士の仕事を選んだ理由は、一つの領域に絞られず、様々なテーマや発明、先端技術に触れられると考えたからです。ずっと同じ技術や製品をやり続けるより、幅広い分野に関わる方が自分の性格に合っていると思いました。
最初の数年間は、特許事務所勤務の弁理士として、半導体や自動車関係の特許出願・審査対応の仕事に携わりました。当時は、半導体ではフラッシュメモリやレーザー、自動車では燃料電池や排気ガス規制対応などの出願が多かったです。ただ、特許出願をして権利化するところまでは役に立てても、頑張って権利化した特許がクライアントの事業にどの程度貢献できているのかが分からず、その先の展開が見えないことがやや不満でもありました。
そこで、もっと経営に近いところで仕事がしたいと考えていた頃、恩師である弁護士の先生から、法科大学院に入学して弁護士資格を取らないかと誘われ、チャレンジすることにしました。特許事務所での仕事を終えた後、夜間は大学に通う……という生活を3年続け、弁護士資格を取得しました。
現在は、特許訴訟やライセンス交渉、スタートアップの法務・知財戦略、VCでの知財DD等、様々な業務に携わっています。 もともと経営者だった父親の影響でビジネスに興味がありましたが、弁護士になる前はそうした仕事を行うチャンスがありませんでした。今は、弁護士・弁理士のダブルライセンスを持つ専門家として、企業の経営層や決裁権者に直接アドバイスする機会も増えましたので、そうした仕事に大きなやりがいを感じています。
なぜ、K-NICサポーターに?
川崎市の支援事業として「K-NICを立ち上げるためにサポーターを探している」という相談が当事務所に来たのがきっかけです。私自身も川崎市内に住んでおり、川崎駅前の商業施設に家族で遊びにいくことも多いため、川崎は身近な土地でした。ここで事業支援ができるならと、所内公募で手を挙げ、採用され今に至っています。
K-NIC分野別相談会の担当分野
分野別相談会では、月2枠を担当しています。同じ事務所の奈良サポーター(弁護士・弁理士)と2人体制で、主に知財や法務関係の相談に対応しています。知財とは言っても、その相談内容は多岐にわたります。例えば……
- ・この発明は特許になるのか?
- ・共同研究をするにあたって何に気を付ければいいか?
- ・契約トラブルをどう回避・解決すべきか
- ・商標出願の進め方や費用感について
- ・新規なビジネスモデルが法律に抵触していないか?
相談内容にもよりますが、まずは「こういう制度・仕組みになっています」と基本的なルールの説明から始めることが多いです。ルールの基本を理解してもらったうえで、相談者の具体的ケースに応じたご提案をさせていただくと、より納得感のある相談になるのではないかと考えています。
特許相談の場合
特許の相談では、予め相談内容に近い特許をリサーチしておき、参考になりそうな特許公報を相談時にお見せするよう心がけています。特許について具体的なイメージを持つことである種の気付きを得ることができるため、ディスカッションが一気に盛り上がることも多いです。
特許情報プラットフォーム「J-PlatPat」を使えば、自分で特許を検索することもできますが、あまり馴染みがない場合は、専門家に聞いた方が早くて正確だと思います。そういった意味でも、分野別相談会はなるべく初期の段階から活用頂くのがよいと思います。
契約相談の事例
契約の相談は、すでにトラブルが起きているケースも少なくありません。トラブルがすでに起きている以上、まずは裁判になった場合にどうなるかを法律的な観点から説明します。ただ、トラブル解消の手段としては、必ずしも裁判が最善とは限りません。お金も時間もかかりますし、相手との関係修復も難しくなってしまうからです。それをご理解いただいたうえで、裁判以外の「解決のための選択肢」も一緒に整理していきます。裁判と違って交渉には正解がありません。「どこまで譲歩できるか」「何を守るべきか」を考えながら、相手方と対話を重ねていくことが重要になります。
早めの専門家相談が“効く”理由とは
知財や契約の相談で多いのは、次のようなケースです。
- ・NDAを結ばずに技術情報を開示してしまった
- ・内容を十分に理解しないまま契約にサインしてしまった
- ・大学との知財整理が進まず起業が止まってしまった
こうした失敗の多くは、自己判断や思い込みが原因であることが多いです。
「これくらいなら大丈夫だろう」「お金がもったいないから自分で判断しよう」と進めてしまい、後から問題が拗れてしまうケースは少なくありません。
実際に相談に来られて、「今、初めて契約の意味が理解できた」とおっしゃる方もいらっしゃいます。そういった事例からも、とにかく早めに来てもらうことが重要だと、お伝えしたいです。仮に、現時点で明確な課題が見えていなくても、技術やビジネスモデルがある程度固まっているのなら「今後の事業で気をつけた方がいいことは何か」というような漠然とした相談でも構いません。 弁護士法人内田・鮫島法律事務所では、大企業、中小企業、スタートアップ、機関投資家等の様々なクライアントを通じて、スタートアップ支援の現場の情報を豊富に持っています。このため、テック系の企業に限らず、様々な事業モデルに関してご相談いただくことが可能です。
“研究者・支援担当者にも使ってほしい”相談会
相談者の中には、大学の研究者や先生方も多くいらっしゃいます。中には「特許を取ろうとすることで、本来やりたい研究にリソースを割けなくなるのではないか」という不安を持つ方もいらっしゃると思いますが、そんなことはありません!特許で押さえるべきポイントは限られており、「気を付けなければいけない落とし穴」を知っているだけで、研究成果の行く末(社会実装まで行けるかどうか)はまったく変わってきます。囲碁や将棋と同じで、まずは知財や契約に関する基本的なルールを理解することが大切だと思います。
研究者の方がご自身の専門に注力していただくためにも、法律や特許といった専門外のことは、私たちサポーターに頼って欲しいと思っています。また、起業家ご本人だけでなく、大学の産学連携担当者など支援サイドの相談も歓迎しています。学内ルールや企業との関係整理なども、気軽に相談してもらえればと思います。
相談会を検討している人へ
気になっているなら、すぐにでも相談会へお越しください。
「こんなことを相談してもいいのかな……」といった躊躇は不要です。私たちサポーターの役割は、専門家として前向きなフィードバックをし、起業しようとする人を応援することです。
事業者から見ると小さなことでも、専門家から見ると重要なポイントであることもたくさんあります。だからこそ、特許出願や契約締結の前に、早めに相談して欲しいです。弁護士・弁理士には守秘義務もありますし、「話したら情報が漏洩してしまうのでは」「アイデアを取られてしまうのでは」といった心配もいりません。
アイデアの壁打ち相手として気楽に使ってもらっても構いません、次のステップを明確にするためにも、ぜひ相談会を積極的にご利用ください!

