
地方大学の研究者こそ K-NIC へ岡山大学・内山淳平研究教授が語るディープテック事業化への挑戦
岡山大学 学術研究院医歯薬学域 病原細菌学分野 研究教授の内山淳平氏は、薬剤耐性菌の
問題解決を目指した酵素薬の研究開発に取り組んでいます。
研究成果の社会実装を目指し、2027 年のスタートアップ創業を視野に精力的な起業準備を進め
ています。
内山氏は 2025 年上期「K-NIC Startup Hands on Program」に参加しました。地方大学の研究者としてディープテックの事業化に挑む中で、プログラムの参加を通しどのような学びを得たのか。
研究の背景やプログラムで得た成果、これから起業を目指す研究者へのメッセージなどを語っていただきました。

内山 淳平 氏
<プロフィール>
岡山大学 研究教授
現場課題を起点に、One Health視点で社会実装を進める研究起業家。博士(医学)。Bond Univ.(豪州)等を経て岡山大学。感染症領域の大学発技術をアニマルヘルスで実用化し、AMR対策のグローバル展開を目指す。企業連携・共同開発を推進し、製品化・量産・海外展開までの事業戦略設計に取り組む。知財は国内特許4件・海外特許3件登録、計13件出願。
研究の社会実装を目指して~動物用医薬品への転向を決意~
私は微生物研究を専門にしています。細菌やウイルスなどを対象にした研究を続けてきました。微生物研究というのは、人でも動物でも応用できる分野で、宿主がどちらかによって応用先が変わります。研究を事業化し世に出すことを目標に、これまで研究に取り組んできました。
最初はファージ療法といって、ウイルスを使った感染症治療の研究をしていました。しかし、研究を進める中で、その研究を医薬品として承認・上市した場合、数千万円規模の薬価となる可能性が高く、作っても売れない可能性があることがわかりました。つまり市場の適合性が極めて低いことに気が付きました。
そんな中で、見つけた一つの方向性が抗菌酵素でした。抗菌酵素は、酵素療法の1つであることから実用化への道筋があり、開発における課題が少ないことでした。また、動物用医薬品は人の医薬品と比べると開発期間が比較的短いという利点があり(それでも10年)、人間の医薬品に比べ売上を早期にたたせることができます。麻布大学に在籍していたとき、ある製薬会社の方から「この研究を事業化してみてはどうか」と言われ、それが起業へ向け動き出した一番大きなきっかけになっています。
実は、当時の上司が動物用医薬品の実用化に成功しており、私にとっても身近な事例でした。「国内での実装」をより確実にするために、方向転換を決めました。
研究環境を求めて国立大学へ移り、現在は岡山大学に在籍しています。現在、人工抗菌酵素という技術を使って、動物用の新しい抗菌剤となり得る研究を進めています。薬剤耐性菌は世界的な問題になっているので、この技術は「社会の課題解決」につながると考えています。
NEDO の支援のレベルの高さに触れ、プログラムへの応募を決める
起業支援プログラムを活用するようになったきっかけは、岡山大学の学内ピッチコンテストでした。実をいうと、そのときは「ピッチ」というのが何かさえ、よくわかっていませんでした。参加を決めた後から、URA(University Research Administrator)に確認し1週間でスライドを作成、コンテストで「NEDO 賞」というのを受賞しました。このNEDO賞の特典が、「NEDOの“NEP開拓コース”に応募すると、審査の時に加点特典が受けられます」というものだったんです。NEPについて調べ、研究開発資金の補助金が受け取れることを知りました。せっかくなら……と応募したところ無事採択され、1年間のNEPプログラムに参加することとなりました。
NEP に参加する中で、メンターの方々と度々議論する機会を得ることができました。議論する中で、心から「この人たちはすごい」と感じたんです。メンターの方から指摘をもらう内容は的確で、「なぜ指摘したのか」という理由も丁寧に説明してくれます。他にも事業化に必要なビジネスについても学ぶこともでき、私自身とても成長することができました。
地方にもアクセラレーションプログラムはあります。しかし、ディープテック領域のアクセラレーションを行えるものは数少ないのが現状です。NEPに参加する中で「より深く、技術そのものについて議論できる環境で、事業のブラッシュアップをしていきたい」と思うようになりました。
NEP のメンターの方々が「Kawasaki-NEDO Innovation Center」のメンターとしても活躍されていることを知り、事業をさらにブラッシュアップするなら信頼できるメンターの方々がいるプログラムが最適だと考え、「K-NIC Startup Hands on Program」への応募を決めました。
的確なアドバイスと宿題で鍛えられた実践力
ハンズオンプログラムでは、本当に多くのものを得ました。
特に印象に残っているのは、メンタリングの具体性です。毎回、「このスライドのここが足りないので、次までにこんな風に準備してください」といった形で、何が必要なのかを明確に示してくださるんです。そしてその通り修正していくと、みるみる資料の完成度があがっていきました。
プログラム通して、最終的には50枚ほどのピッチ資料を完成させることができました。市場分析も含めて、かなり細かく整理された資料です。この資料は今の事業プランに繋がっており、このハンズオンプログラムがなければたどり着けなかったと思っています。
プログラム後に広がった事業化の可能性
ハンズオンで得た経験は、その後の活動にも生きています。
プログラム終了後、VCの方に「創薬は時間がかかるから、早期に売上がたつビジネスを考えた方がいいのでは」というアドバイスをもらい、動物用飼料添加物という新しいビジネスの可能性も検討するようになりました。このビジネスのピッチ資料を作成した際に、ハンズオンでの経験が生かされています。一度通しでピッチ資料を作ることで「何を書けばいいか」「見る相手が何を知りたいのか」というのが自ずと分かってきます。このスピンオフ事業の計画を自分で作成することができたのも、ハンズオンの経験があったからだと思います。
実際に新しい事業案でピッチイベントに参加したところ、SBIR関連のイベントで賞をいただくこともできました。他にも、ハンズオンで作った資料を企業に見せたところ、興味を持っていただき、動物医薬品企業との新契約につながる可能性も出てきています。
地方研究者こそK-NICを活用してほしい
地方にいると、どうしても「地域の課題」に目を向けがちです。一方で、東京ではグローバル市場を前提に議論されることが多く、また政府の研究支援制度の多くが、グローバル展開を前提にしています。これを踏まえると、ディープテック×グローバルで実装化を目指す研究者であれば、なるべく早い段階で首都圏のエコシステムとつながった方がいいと思っています。
そうした意味でも、K-NICのような場所は非常に重要だと思っています。特にK-NICは支援対象が全国なので、地方大学の研究者でもオンラインで利用できます。研究成果を社会実装したいと考えているなら、K-NICと繋がらない手はないと思います。
今は2027年頃の創業を目標に準備を進めています。研究者だけではなく、経営人材とのネットワークづくりなども進め、準備しているところです。
「Thinker より Doer になれ」プログラム応募を検討している方へ
「Thinker to Doer」という言葉があります。つまり、考えるより行動しろということです。プログラム応募を検討している方にはぜひこの言葉を送りたいです。応募を迷っているのであれば、とりあえず申し込んでみたらいい。細かいことは、申し込んでから考えればいいんです。
行動することが、すべてのスタートだと思います。

研究開発型スタートアップ成長支援プログラム
「Startup Hands on Program」とは
研究開発型スタートアップを目指す方のために、K-NICが実践的なハンズオンプログラムを提供します。経験豊富なメンター2名が技術シーズを確実にビジネスに変換する2ヶ月間の集中支援プログラムです。NEDOの支援事業採択やVC調達実績を持つ専門家が、事業プランを徹底的にブラッシュアップします。
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