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イベントレポート

事業化に向けて共に歩む。K-NICハンズオンプログラムで得られるものとは?

事業化に向けて共に歩む。K-NICハンズオンプログラムで得られるものとは?

K-NICで毎年2回実施している K-NIC Startup Hands on Program(スタートアップハンズオンプログラム)。

ディープテック領域で具体的な技術シーズがあり、研究開発要素のある事業で起業を目指す方を対象にした本プログラムでは、NEDOのスタートアップ支援事業(NEP、STS等)での採択や資金調達に成功した起業家を多数輩出しています。

今回は、2023年6月2日(金)に開催した「K-NICスタートアップハンズオンプログラム プレイベント~プログラム説明会~」のトークセッションの内容をお届けします!
 
イベントには、当プログラムの2021年度の参加者であるLetara株式会社Co-CEO Landon KEMPS(ケンプス・ランドン)氏がゲストで登壇。プログラムのメンターを務める武田氏、尾崎氏、岡島氏と共に、プログラムで得られるものやメンター達の関わり方などを振り返っていただきました。

< 登壇者 >
【 スペシャルゲスト 】

Landon KEMPS(ケンプス・ランドン)氏
Letara株式会社 Co-CEO
Kamps Landon_顔写真
1988年アメリカフロリダ州生まれ。2011年に米陸軍の小隊長として、アフガニスタンへ派遣される。より平等な民間宇宙インフラを目指し、北海道大学工学院に入学。安全なハイブリッドロケット技術について研究開発を行い、博士号 (工学)を取得。2020年4月から北海道大学の特任助教として従事。2021年4月にLetara株式会社 創業者兼代表取締役に就任。米陸軍功労勲章、米国航空宇宙学会 優秀論文賞、MIT「Innovators Under 35 Japan 2021」、およびS-Booster 2021 アジア・オセアニア賞等を受賞。現在は、世界初の高推力かつ安全な宇宙推進系の事業化に向けて日々取り組んでいる。

【 ハンズオンプログラムメンター 】
武田泉穂
武田泉穂_顔写真
東京工業大学大学院にて博士号を取得(理学)。専門は生物物理学。博士研究員を経て、ライフサイエンス・バイオテックを主軸とした複数のベンチャービジネスに経営者・創業者・投資家として参画。薬機法、臨床試験、市場創出、海外展開等を踏まえたヘルスケア産業の事業開発の実績を多数もち、医療業界におけるビジネスモデルに精通。自ら起業家として事業育成、資金調達、イグジット等の経験・知見を有する。産学連携も得意とし、国公立大学2校にベンチャー規定を導入した。東京工業大学にて研究者のアントレプレナーシップ・キャリアプランの講義、特定准教授・若手起業家のメンター従事の経歴を有する。

尾崎典明
尾崎典明_顔写真
2004年九州工業大学大学院・工学研究科物質工学専攻修了。コンサルティング会社にて企業の新事業・新商品開発支援に携わる。2009年S-factory創業、企業に加え、自治体、NPO、スタートアップに対し支援を行う傍ら、官公庁等のアドバイザー等歴任。業種業態問わず、またその事業ステージによらず、それぞれの課題に応じた支援を実践。現在、発明推進協会研究員、TXアントレプレナーパートナーズ副代表理事、NEDO事業カタライザー、筑波大学国際産学連携教授も兼務。

岡島康憲
岡島康憲_顔写真
2006年、電気通信大学大学院修了後、NECビッグローブ株式会社(現:ビッグローブ株式会社)にて動画配信サービスの企画運営を担当。
2011年にハードウェア製造販売を行う岩淵技術商事株式会社を創業。自社製品開発以外にも、企業向けにハードウェアプロトタイピングやハードウェア商品企画の支援を行う。2014年、ハードウェアスタートアップアクセラレータ「ABBALab」の立ち上げやハードウェアスタートアップ向けのシェアファクトリー「DMM.make AKIBA」の企画運営並びに同施設が企業向けに提供する各種研修の開発/講師を担当。2017年、センサーデバイスにより収集した情報の可視化プラットフォームを提供するファストセンシング株式会社を創業。マーケティングを中心とした業務を担当。

● 川崎の起業支援施設/コワーキングスペースのK-NICでは、起業に役立つイベントやセミナー、プログラムを開催しています。
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● 武田氏、尾崎氏、岡島氏はK-NICのスーパーバイザーです。
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「夢」を「現実」に落とし込む 事業成長の礎に

ハンズオンプログラムに参加したきっかけ

武田:Landonさんは2年ほど前にK-NICへいらっしゃいました。北海道大学の産学連携室の担当者から「Letaraを成長させるために」ということで、K-NICのハンズオンプログラムをご紹介いただいたそうですね。

Landon:はい。武田さんのようにベンチャー企業の経営者としての経験があり、NEDOの補助金申請にも強い方によるメンタリング・プログラムということで提案されました。

ほかの参加者もそうだと思いますが、技術者は自分の専門には詳しいけど、ほかの部分は疎いところがあります。

私には「宇宙へ人とモノを運ぶ」という夢があり、エンジン技術者としての自信はすごくありましたが、補助金申請に必要な項目、VCやNEDOの審査員が何を求めているのかがわかりませんでした。

武田:そうですよね。さらにLandonさんの携わる宇宙分野だと着目すべき項目も変わってくるし、計画も5~10年先を見る必要があります。そこで、宇宙産業にも理解がある尾崎さんにもメンターとして入ってもらいました。

尾崎:皆さんお忙しいので、ZoomやSlackも使いながら、日程が合えば夜や土日でも柔軟にお話ししましたね。

ハンズオンプログラムのメンタリングについて

Landon:当時の私はVCのこともよく知らず、先輩からは「50~100社当たらないとうまくいかない」とも言われました。ハンズオンプログラムでは「どのVCから回るのが適切か」も一緒に考えていただき、効率よくアプローチすることができたと思っています。

また、プレゼン資料についても、一般の方向け、VC向け、社内向けの3種類を用意した方がいいということも教えていただきました。

本当に何もわからないところから始まりましたが、プログラム終了後、1年ちょっとで5社から1.2億円集まり、目指していたNEPの申請も通りました。事業計画フォーマットの基礎は今でも生かされていますし、このプログラムには、本当に私の基礎を作ってもらったと思います。

尾崎:Landonさんの時は、初期のお金、事業計画の最初のところをお手伝いしました。プレイヤーのステージによってやり方は変わりますが、研究開発系のベンチャーやスタートアップにとって、NEDOのNEPなどから融資を得るのは王道パターンです。

K-NICのメンターにはVCやVC経験者がいますから、その勘所をお伝えすることはできると思います。

武田:そうですね。「事業計画・ビジネスモデル・資本政策はどう作成すれば良いのか」「VCはどういう人たちなのか」ということにご興味がある大学の先生方にも、是非ご参加いただきたいです。

前向きに目線を合わせ「互いをアップデートしあう」

メンター達の関わり方

武田:岡島さんはLandonさんのメンターではありませんでしたが、IT・機械系がご専門ですよね。

岡島:そうですね。メンタリングでは、起業家としての覚悟、「何をモチベーションにやるのか」「本当に最後までやれるのか」についてお話しすることが多く、そういう部分のコミュニケーションも僕は大事にしたいと思っています。

武田:岡島さんのお話は非常に勉強になりますし、Slackのフォローもすごく丁寧で、皆さんから「岡島さんのコメントがすごく参考になります!」と言っていただいています。メンタリングではどんなことに気を付けているんでしょうか。

岡島:ふわっとした言い方ですが「目線を合わせること」がすごく大事だと思います。

まずはプログラムに参加される起業家の方々が何を成し遂げたいのか。資金調達なのか、実証実験のシナリオづくりなのか、そこの目線をお互いに合わせて最善手を打っていくことを心掛けています。

抜け漏れなくやるべきことをやらなければ、スタートアップはすぐに弱ってしまうので、「そうならないように」という思いが長いポエムになってSlackに表れることもありますが(笑)。

メンターの皆さんが同じようなスタンスで関わっているということが、このプログラムの特徴だと思います。

Landon:ベンチャー企業を作ると、色んな方から色んな意見をいただきますが、K-NICでは目線を合わせていただけましたし、前向きにアドバイスいただいた印象があります。

以前は「誰が正しいのだろう」とわからなくなることもありましたが、K-NICのハンズオンプログラムは筋が通っていて納得できるアドバイスをいただけたので、「K-NICから言われたことなら信じられる」と思えました。振り返ってみると、このプログラムで学んだことを、その通りに役立ててここまできた感じです。

尾崎:Landonさんが「ある人からこんなことを言われたんですけど」と相談に来た時、「それは無視しよう!」と言ったこともありましたね(笑)。

K-NIC内のメンター同士でも全然違う意見を言うこともありますが、皆が建設的に考えているので、本音をぶつけ合って取り組んでいただけたと思います。

こんな人におすすめ

岡島:中には「人の意見は聞きたくない」「自分は我が道を行く」という方もいます。確かに最後に判断するのはご自身ですが、まずは「自分の考え方をアップデートしよう」と考え、少し畑違いの人の意見を聞いてみるといいのではないかと思います。

そのような柔軟性をもって臨んでもらえるとプログラムを有効活用できるし、僕らとしても手伝いがいがあるなと思います。

武田:Landonさんも、この2年の間にアカデミアと産業界との違いを感じながらバージョンアップされていったと思います。皆さんがおっしゃるように「何かを吸収したい」という思いがある研究開発型の方々には、おすすめのプログラムですね。

K-NICハンズオンプログラムとは?

特定の技術シーズを持ち、NEDOが実施する「研究開発型スタートアップ支援事業」等(NEPSTSなど)へのエントリーやVC等からの資金調達、事業会社との協業を目指す起業家候補や研究開発型スタートアップを対象とした、短期集中型のアクセラレーションプログラムです。

約2ヶ月間、専門知識を持つK-NICスーパーバイザー2名がチームとなり個別のハンズオン支援(メンタリング)を行うことで、起業の促進や事業化の加速を目指します。

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● 武田氏、尾崎氏、岡島氏はK-NICのスーパーバイザーです。
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