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起業家インタビュー

屋外広告の課題を天文学の研究から解決!?アイディアと技術を掛け合わせた学生経営者

屋外広告の課題を天文学の研究から解決!?アイディアと技術を掛け合わせた学生経営者

川崎市にある起業家支援拠点&コワーキングスペース・K-NICを利用しながら活躍されている起業家に、
起業までの軌跡やK-NICの便利な活用方法などをインタビューするシリーズ。

今回は、大学院生でありながら起業し、資金調達まで一気に進んだ 株式会社Essen の橘さんにインタビュー!

学んでいる技術と事業に活用している技術の共通点や、学業との両立、今後の展望について伺いました。

起業家プロフィール

株式会社Essen(本社:神奈川県川崎市中原区)
橘 健吾氏

【代表取締役社長】
2021年8月に同社を設立。現役の東京大学大学院生であり、天文学を専攻。

屋外広告の課題「広告評価測定」を可能にした「WithDrive」

─御社の事業について教えてください。
当社は2021年8月に設立されたスタートアップです。広告効果をAIで可視化できる車両屋外広告サービス「WithDrive」を運営しています。
広告を出したい広告主と、広告収入を得たいドライバーの方をマッチングさせるサービスで、マイカーのリアガラスを広告媒体として活用しています。
リアガラスに広告ステッカーを貼ったドライバーさんから、携帯経由のGPS情報を提供いただきます。
その情報と「どんな人が・どんな場所に・何人くらいいたのか」という空間統計データを掛け合わせて、広告の効果を推定する仕組みです。
これまで、看板等の屋外広告は「どういう人に何回見られたか」等の定量的な数字は把握しづらいものでした。
それを定量的な数字で示し、それに応じて広告料金を決められるようにした新しい広告サービスが「WithDrive」です。
費用対効果を見ながら屋外広告を出すことが可能になります。

─このサービスが生まれたきっかけは何ですか?
2017年に友人と車で日本を周っていた時期がありました。その際に自転車に広告を貼っている人を見たんですね。
それを見て「車のリアガラスってステッカーとか色々貼れるな」と思ったんです。
車の表面を広告媒体として活用するのは良いんじゃないか、そういうマッチングサービスはあるのかと探しましたが、当時はなかったんですね。
ないなら自分で作ってみたいなと思っていました。一度クラウドファンディングもやってみましたが、その時は資金が集まらなくて。
そうこうしている間に大学院試験も合格し、このアイディアは一旦寝かせて研究に集中しました。

2020年修士2年の時に新型コロナウイルスの流行が始まりました。私も授業がオンラインになりました。
シェアハウスに住んでいた友人も在宅勤務・オンライン授業になり、「時間が空いたので新しいことを始めたい」と話していたので、
寝かせていたアイディアを話したことが開発のきっかけです。自分たちのスキルや専門知識を活かせる方法を探り、広告効果の評価技術の開発をすることになりました。

天文学の研究から生まれた広告評価システム


─「どれだけ屋外広告が見られたのかを計測する技術」は橘さんか開発されたのですか?

そうですね。私と共同創業者のメンバー3人で開発を始めました。そのうちの一人はAIを使った研究をずっとやっていました。

―橘さんの研究のバックグラウンドを教えてください。
今は東京大学の博士課程に所属しています。専攻は天文学です。天文学と広告と違うね、とよく言われるのですが、
AIを使って解析するという手段は一緒です。何を解析するか―星なのか広告なのかの違いなので、私の中ではよく似ていると考えています。

―博士課程の学業との両立は大変ではないですか?
時間のやりくりは大変ですね。一方、学業との両立は良い面もあります。例えば、様々な角度から物事を見られる点です。
現在特許出願中の広告評価システムも、広告業だけしていると創出できなかったアイディアじゃないかなと思います。
人の流れ・車の流れ・道路構造などをデータ化してモデルに落とし込めたのは、研究手法が身についていたからだと思います。

─研究の手法を上手に取り出し、他のテーマに活用したのですね。
そうですね。当社のサービスの説明をした時も、この技術や手法を説明すると、聞いている方に「なるほど」と納得していただけます。

K―NICとの繋がり

─K-NICの特定創業支援を受けていただいて法人成りされましたね。
はい。この特定創業支援は、K-NICコミュニケーターの小山さんに紹介してもらいました。
エンジェル投資家から投資を受けることが決まり、法人成りをしないといけないタイミングでもあったので受講しました。
フルオンライン且つ、自分で受講できる日時を決められるのはありがたかったですね。学業もありますので。

若い経営者の未来設計図

─これからの展望を教えてください。
4年後上場を考えています。理由は海外展開のための資金を集めるためです。当社のサービスやビジネスモデルは海外展開ができると思っております。
あとは人材を充実させたいですね。営業の方、データサイエンティストの方、エンジニアの方、マーケターの方、管理部の方、大募集中です!
商品の設計・売りのところで協業できる方、VCの方とも出会えたら嬉しいですね。

起業を考えている学生の方に一言!

起業にこだわらず、ますはやりたいことを思い切りやってください!その中に起業という選択肢があったなら、選んでみてもいいと思います。